◆公正証書による強制執行への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
公正証書とは
公正証書とは、公証人が作成した法律関係その他私権に関する証書をいうが、なかでも金銭消費貸借契約公正証書、債務弁済契約公正証書などと呼ばれる金銭の貸借に関する公正証書が大量に作成されている。これらのほとんどはクレジット会社、貸金業者が債権者として定型的な証書として作成されていることが多いが、この公正証書には、「弁済を遅滞した時には強制執行されてもかまわない」旨の強制執行認諾約款と呼ばれる条項が記載されている。
現行制度上、強制執行認諾約款が記載された公正証書を所持していれば、債権者は裁判などであらためて債務名義を取得することなく債務者の給料などを差押えすることができる。
具体的対応
公正証書による強制執行を受けた場合には、公正証書作成当時、債務者が債権者から公正証書を作成することにつき、また、その内容につき説明を受けていたか、実体は準消費貸借契約であるにもかかわらず公正証書は金銭消費貸借契約となっているなど実体関係と作成された書面とが符合しているかなどを検討し、問題がある場合には強制執行停止決定の申立手続きをとるとともに請求異議の訴えを提起し、公正証書の内容自体を争うべきである。
◆支払督促による強制執行への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
仮執行宣言付支払督促は、債務名義として強制執行が可能である。仮執行宣言付支払督促に対し督促異議の申立てをしても執行力は失われないため、強制執行を停止させるためには執行停止の判決を得ることを要する(民事訴訟法398条)。執行停止の裁判の申立てにあたっては支払督促の取消しもしくは変更の原因となる事情がないとはいえないこと、または執行により著しい損害が生ずる恐れがあることにつき疎明することが必要であるから注意を要する。したがって、できればその両方の要件について疎明するのが望ましい。
具体的対応
支払督促は裁判所書記官が発するため、確定した支払督促についても既判力は認められていない。したがって、確定した支払督促に対しては請求異議の訴えを提起することが可能である。
また、確定した支払督促による既に給料などの差押を受けている場合には、請求異議訴訟を提起するとともに強制執行停止決定申立てを行うことができる。この場合の強制執行停止決定申立ては民事執行法36条によるものであるから、未確定の仮執行宣言付支払督促に対する異議申立てに伴う執行停止上の裁判(民事訴訟法398条1項3号)にみられる要件は必要でなく、異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明を行えば足りる。
仮執行宣言付少額訴訟判決による強制執行への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少額訴訟手続きにおける判決に対しては異議の申立てによって判決の確定を遮断することができるが、判決に必要的に付された仮執行の宣言はその効力を失わない。
具体的対応
強制執行を免れるためには、やはり強制執行停止決定手続きを講ずる必要がある。
少額訴訟における判決に対する異議の申立てに伴う強制執行停止については、原判決の取消しまたは変更の原因となるべき事情につき疎明すうことを要する。(民事訴訟法398条1項5号)
仮執行宣言付判決による強制執行への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
破産・免責手続中に一審の判決が出され、控訴中に仮執行宣言付判決により強制執行を受けた場合、一審判決の取消しもしくは変更の原因となる事情がないとはいえないこと、または執行による著しい損害が生ずる恐れがあることにつき疎明した執行停止を申立てることが可能である。
差押禁止債権の範囲変更手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
給料、賃金などの差押え
確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、公正証書などの債務名義により、動産や、債務者が勤務先から得る給料などの継続的給付を受けられる生活の基本的な原資が差押を受けることがある。
しかし、この全額の差押えを認めると債務者やその家族の生活自体が成り立たなくなるため、給料、賃金などから所得税、社会保険料などの法定控除額の金額の4分の3については画一的に差押を禁止している。(民事執行法152条、民事執行法施行令2条)。また、給料などから法定控除した金額が28万円を超える場合には、そのうち21万円について画一的に差押えが禁止される。なお、給料などの継続的な債権についての差押えは、差押債権が満足されるまで継続的な効果を有する。
動産への差押え
動産についても消費者の生活に欠くことのできない動産は差押禁止動産とされている。
東京地方裁判所における差押禁止動産は次のとおりである。
整理ダンス・*洗濯機・食器棚・ベット・鏡台・洋ダンス・調理器具・食器棚・食卓セット
*冷蔵庫(容量を問わない)・*電子レンジ・*瞬間湯沸かし器・*ラジオ・*テレビ(29インチ以下)
*掃除機・冷暖房器具(ただし、エアコンは除く)・*エアコン・*ビデオデッキ
(*印の物が数点ある場合は1点に限る)
差押禁止債権の変更手続き
多重債務者の多くは金銭的に余裕のない状態にあるのが一般的であるため、その収入の4分の1とはいえ給料などが差押えられると、金銭的に窮地の状態に陥る恐れがある。このような場合、裁判所は申立てにより、差押えをした債権者と差押えをした債務者の生活状況やその他の事情を考慮して差押命令の全部または一部を取消し、差押えの禁止される債権の範囲を拡張することができる。
差押禁止債権の範囲変更(拡張)は、差押えを受けた債務者が申立てをすることができ、申立て認容される場合には差押命令の全部または一部の取消しが命じられる。なお、この取消しの効果は相対的なものであるといわれているから、複数の債権者から競合して差押えを受けたり、前後して差押命令が発令された場合には、各差押命令に対して差押禁止債権の範囲変更の申立てをすることを要する。
裁判所の審査内容
差押禁止再建の範囲変更申立てに対して裁判所は、
@債務者の生活状況
A債権者の生活状況
Bその他の事情
を考慮して審査するので、申立書にはこれらの要件を満たしておくことを要する。
免責確定による差押の解除・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
破産債権者による差押えが継続している間に免責が確定した場合、債務者の支払義務は免除されるので、差押えの続行は許されない。給料などの継続的給付に対し差押えが継続している場合、免責確定後の強制執行による配当については不当利得になる。
免責確定による差押えの終了は、債権者が自主的に差押えを取り下げれば簡便であるが、そのような事例はほとんどない。さらに、免責確定証明書は強制執行の停止の効力を有する文書ではないため(民事執行法39条)、債権者が自主的に取り下げない場合には、請求異議の訴えを提起して差押えの効力を争うことが必要となる。
債務者としては、まず、差押債権者に対し差押えを取り下げるべく依頼を行い、差押債権者の協力が得られない場合は請求異議の訴えを提起するほかない。
なお、請求異議の訴えを提起しただけでは強制執行は停止しないため、訴え提起と同時に強制執行停止決定の申立てを行う必要がある。この場合、強制執行停止決定には担保(3万円〜5万円程度)を命じられることがある。
さらに、強制執行停止決定はその正本を執行裁判所に提出しなければ実際に強制執行は停止されない。
請求異議の訴えに対しては、破産債権者が争う姿勢を見せることはほとんどなく、債権者が強制執行を取り下げるのを待って請求異議の訴えを取り下げればよい。