民事訴訟の手続、民事訴訟の流れなどについて解説

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1.口頭弁論の基本原則
2.口頭弁論の基本ルール
3.証拠調べの実際
4.弁論の終結


2.口頭弁論の基本ルール

  • (1)弁論主義と職権探知主義
  • (2)弁論主義の意義・内容
  • (3)裁判所による釈明権の行使(弁論主義の補完)

(1)弁論主義と職権探知主義

民事訴訟イメージ  民事訴訟の目的は、主張されている権利・法律関係の存否を貢献的に確定して紛争を解決しようとするものです。裁判所が紛争を解決するための手段である判決をするには、当該事件に関する事実や証拠を収集しなければならなりません。この裁判資料の収集を当事者の権限かつ責任とする建前を弁論主義といい、裁判所の権限かつ責任とする建前を職権探知主義といいます。

 弁論主義は財産関係を対象とする通常の民事訴訟において採用され、職権探知主義は身分関係を対象とする人事訴訟など特殊な手続に限って採用されています。

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(2)弁論主義の意義・内容

民事訴訟イメージ  弁論主義は、裁判資料の収集を当事者の権限かつ責任とする建前をいうが、その内容は次の3つの命題に要約されます。

①裁判所は当事者の主張しない事実を(たとえ証拠上認定できても)判決の資料としてはならない。

 ここでいう「事実」とは、権利・法律関係の発生・変更・消滅という法律効果を判断するのに直接必要な主要事実(直接事実)を指します。主要事実の存否を推認するのに役立つ間接事実や、証拠の信用性に影響を与える補助事実には適用されません。

 賃金請求事件の例でみると、原告が主張する「金銭を交付した、返還約束があった」との事実は貸金返還請求事件の発生を根拠づけるために直接必要な事実であり、「被告は借り受けた金銭はすでに弁済した」と事実は貸金返還請求権の消滅を根拠づけるために直接必要な事実です。

 しかし、「被告は当時金に困っていたが、貸し付けた日以降現金で大きな買い物をした」との事実は貸金返還請求権の発生を判断するのに直接必要な事実ではなく、貸付の事実を間接的に推認させる間接事実です。また、「被告は原告からの借入れ後、遺産分割により多額の現金を手にした」との事実は、弁済による消滅を判断するのに直接必要な事実ではなく、弁済の事実を間接的に推認させる間接事実です。さらに、「贈与を受けたものである」との事実は、原告主張の返還約束の不存在を推認させる間接事実です。

 また、「借用書は偽造したものである」との事実も直接必要な事実ではなく、借用書の信用性に影響を与える補助事実です。

 したがって、返還約束の事実が主張されていないにもかかわらずその事実を認定して原告の請求を認定したり、弁済の事実が主張されていないにもかかわらずその事実を認定して請求を棄却することは、弁論主義に反して違法となります。

②裁判所は当事者間に争いのない事実(自白された証拠)については、そのまま判決の資料としなければならない(証拠調べをしてこれを異なる事実を認定してはならない)

 ここでいう「事実」も、法律効果を判断するのに直接必要な主要事実をいい、原則として間接事実や補助事実には適用されません。裁判上の自白とは、当事者が口頭弁論期日または争点整理手続期日において、相手方が主張する自己に不利益な事実を認める陳述のことを言います。自白の対象となるのは具体的事実であり、法規、その解釈、経験則などは自白の対象にはなりません。

 裁判上の自白(民訴法179条)が成立すると、当該事実については裁判所の事実認定の権限は排除され、自白された事実について証拠調べをして、これと異なる事実を認定してはならないことになります。貸金請求事件の例で見ると、原告が主張する「返還約束があった」との事実を被告が自白しているのに、証拠調べの結果「授受された金銭は贈与として交付されたものである」と民定して原告の請求を棄却したり、被告が主張する「借り受けた金銭はすでに弁済した」との事実を原告が自白しているのに、証拠調べの結果「支払われた金銭は別の売買代金の一部として交付されたものである」と認定して原告の請求を認容することは、いずれも弁論主義に反して違法となります。

 裁判上の自白が成立すると、相手方は立証責任を免れ、これを前提とした訴訟活動を行うことになります。その後に自白を撤回することを認めたのでは相手方の信頼ないし期待を損ない、裁判所の審理も混乱し、禁反言の原則にも反することから、自白の撤回は原則として許されません。例外的に自白の撤回が許される場合としては、

 (1)刑事上罰すべき他人の行為(脅迫など)により自白した場合(民訴法338条1項5号)
 (2)相手方の同意がある場合
 (3)自白の内容が真実に反し、かつ錯誤によってなされた場合

とされています。

③当事者間に争いのある事実を証拠によって認定する場合は、必ず当事者の申し出た証拠によらなければならない(職権で申し出のない証拠を取り調べてはならない)

 原則として職権証拠調べは禁止され、裁判所は当事者の申立てがあった証拠についてのみ証拠調べを行います。したがって、当事者は立証責任を負っている事実の高度の蓋然性を裁判所に認識(確信)させるに足りる適切な証拠を提出すべきことになります。これに失敗すればその事実は認定されず、当事者の主張は根拠づけを得られず、認められないという不利益を受けることになります。

 例外的に職権証拠調べが許される場合としては、管轄に関する事項(民訴法14条)、官庁などの団体に対する調査嘱託(同法186条)、当事者尋問(同法207条1項)、公文書の成立の真正に関する官庁等への照会(同法228条3項)などがある。

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(3)裁判所による釈明権の行使(弁論主義の補完)

民事訴訟イメージ  釈明権とは、事案の事実関係や法律関係を明らかにするため、当事者に事実上や法律上の事項について問いを発し、または立証を促す裁判所の権能です(民訴法149条1項)。弁論主義の下では裁判資料の収集は当事者の権限かつ責任とされますが、当事者の主張立証が不十分・不適切と裁判所が判断する場合にまで当事者の責任として放置することは、裁判所に対する国民一般の信頼も損なうおそれがあることから、弁論主義を補完するものとして認められたものです。

消極的釈明と積極的釈明

 裁判所の行う釈明権行使には消極的釈明と積極的釈明があるとされています。消極的釈明とは、当事者の申立てや主張に不明瞭な点があったり、前後矛盾する点がある場合に(貸金の返還を求めるのか売買代金の支払を求めるのか不明瞭な場合など)、これを問い正して主張を明確に整理させるための釈明です。

 積極的釈明とは、当事者が事案の内容上必要な申立てや主張そしていない場合に、これを示唆し、指摘する釈明です。この積極的釈明権行使の範囲については、裁判所の中立性・公平性の確保との関連で議論の多いとことです。

◆積極的釈明権行使の基準
 どのような場合に積極的釈明権が行われるのかを事実と証拠の関係で整理すると、一応次のように考えることができます。

①事案の内容からみて当然に想定される主要事実が主張されていな場合  たとえば、貸金訴訟において、消滅時効期間が経過しているのに被告が時効援用の主張をしない場合(民法167条など・145条)は、時効援用の主張をするかどうかの釈明を求めることなどである。

 訴訟代理人をつけずに被告本人が訴訟追行している場合には、時効制度についての知識すら持ち合わせていない被告も多く見受けられることから、法的知識としての時効制度の説明を行ったうえで、援用の意思があるかどうかの釈明を求めることは許されてよいとする見解も増えつつあります。

②証拠上認定できる主張事実が主張されていない場合  たとえば、貸金訴訟において証拠上弁済の事実が認定できるのに被告がこれを主張していない場合は、その主張を促すことになるでしょう。

③主要事実が争われているのに、存在することがうかがわれる重要な証拠の申出がない場合  たとえば、貸金訴訟において返還約束や金銭交付の事実が争われているのに、これを認定するに足りる証拠である借用書や領収書などの存在がうかがわれるのもかかわらず、その証拠の申出がない場合には、提出を促すことになるでしょう。

④立証活動が不十分であるのに当事者が立証十分として誤解している場合  このような場合、裁判所としてはその時点での心証をある程度開示して、さらに立証を促すことは許されていると考えられています。

◆釈明を求められた場合の当事者の対応
 当事者には裁判所の釈明の求めに応じる義務があるわけではありません。しかし、裁判所は、訴訟の進行状況に応じた事件に対する法律上の見解や心証の程度を踏まえ、そのまま放置すると当該当事者の不利益になることを考慮して釈明するのが通常であるから、一般的には釈明に応じないと不利益な裁判を受けるおそれがあるといえるでしょう。

 攻撃・防御方法の趣旨が不明瞭であるとして釈明を求められているのにこれに応じなかったり、釈明すべき期日に欠席すると、裁判所はその攻撃・防御方法を却下することができるとされている(民訴法157条2項)。釈明を求められた当事者としては慎重にこれに耳を傾け、対応を検討すべきである。

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