民事訴訟手続きの進め方
ここでは、実際に民事訴訟がどのように進行していくのか、具体例をもとに説明していきたいと思います。
具体例
100万円を友人に1年後に返すという約束で貸したところ、1年が過ぎても返してくれない。直接返してくれるように言ってもなんの返答もない。
- 1.原告による訴えの提起 (訴状提出)
- 2.訴状審査、第1回口頭弁論期日指定、訴状・呼出状の被告への送達
- 3.被告による答弁書の提出
- 4.口頭弁論期日、争点整理手続
- 5.当事者照会、文書提出命令
- 6.証人尋問、当事者尋問
- 7.判決、控訴、和解
1.原告による訴えの提起 (訴状提出)
民事訴訟では訴訟を起こす側を原告(=貸主)、訴えられる側を被告(=借主)と言います。まず原告が裁判所に対し「訴状」を提出することから民事裁判が始まります。
訴状には、「被告は原告に対し金100万円を支払え。」というような原告が裁判所に認めてもらいたい請求の趣旨と、「平成11年4月1日に原告は被告に対し平成12年3月31日に返す約束で金100万円を貸し渡した。」などという請求の原因を書く必要があります。
それだけではなく、被告が争うであろう事実、すなわち原告が証拠で証明しなければならないであろう事実に関連する重要な事実(重要な間接事実)及び証拠(証拠方法)をも記載し、重要な証拠を添付する必要があります。例えば、訴訟になる前から被告がお金を受け取ったことさえ否定しているのであれば「当時被告は金に困っていて、平成11年4月1日に原告の家に来て懇願したので、手元にあった金を渡した。証拠として借用証書と領収書がある。」などというように重要な間接的な事実や証拠についても記載します。
2.訴状審査、第1回口頭弁論期日指定、訴状・呼出状の被告への送達
提出された訴状は裁判所の訴状審査を受け、不備があれば裁判所は補正を促します。もし補正に応じなければ補正命令を出し、これにも応じなければ訴状は却下されることもあります。訴状が適切であれば第1回口頭弁論期日の指定がなされることになります。
なお、裁判所書記官により第1回口頭弁論期日前に、当事者から訴訟の進行に関する意見その他訴訟の進行について参考事項の聴取がされます。
3.被告による答弁書の提出
被告にとって民事裁判は、訴状・呼出状を裁判所から受け取ることにより始まります。これに対し被告は訴状への反論を「答弁書」としてまとめ、定められた日に間に合うように裁判所に提出しなければなりません。もし第1回口頭弁論期日までに被告が答弁書も提出せずその期日に出席もしなければ、原告の言い分を認めたものとして判決が下されることになります(欠席判決)。
答弁書には、請求の趣旨や請求の原因などに対する答弁を記載する必要があります。また、ここでも訴状と同様に重要な事実(重要な間接事実)及び証拠(証拠方法)を記載し、重要な証拠を添付する必要があります。
例えば、被告がお金を受け取ったことさえ否定するのであれば、請求の趣旨に対しては「原告の請求を棄却する。」との答弁となり、請求の原因に対しては「否認する。」という認否を行い、合わせて「なぜならば原告がお金を渡したという日には被告は日本にいなかった。証拠として出国記録がある。借用証や領収書は被告の署名捺印ではない。」などという事実をも記載し、その出国記録などの重要な証拠書類などを添えることになります。
また、もし被告の反論が「お金は借りたが返した。」というのであれば、請求の趣旨に対しては「原告の請求を棄却する」との答弁となり、請求の原因に対しては「認める。」とした上で「平成12年3月31日に原告に100万円を返した。」と言う事実(抗弁という)を主張し、原告名義の領収書などの重要な証拠書類などを添えることになります。
4.口頭弁論期日、争点整理手続
以上のような準備を経て、裁判所における第1回口頭弁論期日が開かれ、その後も口頭弁論や争点整理手続などの期日において当事者と裁判所が議論して真の争点は何かを確認していくことになります。
特に今回の改正により、裁判所における審理の期日として従来の「口頭弁論」以外に、「準備的口頭弁論」、「弁論準備手続」そして「書面による準備手続」の争点整理手続が新設され、その他訴訟の進行に関して必要な事項について協議する「進行協議期日」も新設されました。
そして、これらの期日において充実した審理を行うことができるようにするため、当事者が期日において主張する内容や証拠の内容を記載して裁判所に提出する書面(「準備書面」)についても、詳しい事実や重要な証拠を記載する必要があり、また期日の前に余裕を持って裁判所に提出され、また相手方にも直送されなければなりません。
この弁論準備手続や書面による準備手続、進行協議期日においては、遠方にいる当事者や代理人の弁護士が裁判所に行かなくとも手続を行えるように電話会議システムによる審理が可能となりました。また、このような期日においてだけでなく期日外においても、裁判長は当事者に対して電話やFAXで質問をして回答を求めたり立証を促したりできることも明確にされました。
このようにして、口頭弁論や争点整理手続において当事者双方に争いがない事実が確認され、真に証拠による証明が必要な争点についてのみ、必要な限度でのみ、裁判所が証人や当事者の尋問などの証拠調べを行えば良いことになります。
もしいったん確認された争点以外の争点を後に提出しようとする場合、他方当事者の求めがあれば、なぜ以前にその争点を提出できなかったのかを説明しなければなりません。
5.当事者照会、文書提出命令
平成11年の改正では、訴訟進行中に主張又は立証を準備するために必要な事項について、一方の当事者が相手方に対して直接書面で照会することができる「当事者照会制度」が新設されました。
裁判所が一方の当事者の申立に基づいて立証に必要な文書の提出を所持者に対し命令する制度を「文書提出命令」と言いますが、今回の改正では、基本的にすべての文書について提出を命ずることが認められることになりました(文書提出命令の一般義務化)。
これらの制度はいずれも当事者間の証拠の偏在を是正し、民事訴訟における争点の早期確認を可能とするために新設又は拡大されたものです。
6.証人尋問、当事者尋問
裁判書は、真に証拠による証明が必要な争点についてのみ証人や当事者の尋問を行うことになりますが、この証拠調べは原則として証人や当事者がある期日に裁判所に集まり、一日で全ての尋問を終えるよう、中して行われることになります(「集中証拠調べ」)。これにより審理の無益な長期化が避けられ、また尋問を直接聞いた裁判官が新鮮な心証のもと判決又は和解を行うことができることとなります。
なお、証人尋問、当事者尋問の方法として、遠隔地に居住する証人等をその居住地の裁判所に来てもらい、裁判官や代理人弁護士は本来の裁判所からテレビ会議システムを通して尋問することも可能となりました。
7.判決、控訴、和解
争点整理と集中証拠調べを前提として審理が終われば、原則として口頭弁論終結から2ヶ月以内に判決が言渡されます。
言い渡された判決に不服がある場合は、判決書を受け取ったときから14日以内に控訴状を判決を受けた裁判所に提出して控訴しなければ、判決はそのまま確定してしまいます。
なお、当事者双方がそれまでの審理を通じて自主的に又は裁判官のすすめによりお互いの主張を譲り合って和解により訴訟を終了させることができるのは従来と変わりありません。
みなとみらい司法書士事務所
代表者 司法書士 佐藤鋭一
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