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 口頭弁論期日

1.口頭弁論の基本原則
2.口頭弁論の基本ルール
 (1)弁論主義と職権探知主義
 (2)弁論主義の意義・内容
 (3)裁判所による釈明権の行使(弁論主義の補完)
3.証拠調べの実際
 (1)書証の証拠調べ
 (2)証人の証拠調べ(証人尋問)
 (3)当事者本人の証拠調べ(本人尋問)
4.弁論の終結

 

1.口頭弁論の基本原則

 口頭弁論における審理の基本原則は、公開主義(憲法82条1項)、口頭主義(民訴法87条・161条)、直接主義(民訴法249条1項)である。これは、口頭弁論における審理は、公開の法廷で、当事者が口頭による陳述(弁論)を通じて主張立証を行い、この口頭弁論に直接関与した裁判官だけが判決をすることができるとする原則である。
 このうち口頭主義については、口頭陳述にありがちな不完全さ、不正確さを補うため、相当広範囲にわたって書面を利用することとされている。(民訴法161条・133条・143条2項・261項3項など)。書面の活用は、口頭主義の短所を補完するという意義だけでなく、書面で準備させることによって無駄な陳述を防ぎ、複雑な事実関係や法律上の主張を明確にしてこれに対する相手方の反論を容易にし、その結果、双方の弁論をかみ合わせて争点を明確にするという長所も認められます。

 

2.口頭弁論の基本ルール


(1)弁論主義と職権探知主義


 民事訴訟の目的は、主張されている権利・法律関係の存否を貢献的に確定して紛争を解決しようとするものである。裁判所が紛争を解決するための手段である判決をするには、当該事件に関する事実や証拠を収集しなければならない。この裁判資料の収集を当事者の権限かつ責任とする建前を「弁論主義」といい、裁判所の権限かつ責任とする建前を職権探知主義という。
 弁論主義は財産関係を対象とする通常の民事訴訟において採用され、職権探知主義は身分関係を対象とする人事訴訟など特殊な手続に限って採用されている。


(2)弁論主義の意義・内容

 弁論主義は、裁判資料の収集を当事者の権限かつ責任とする建前をいうが、その内容は次の3つの命題に要約される。
@裁判所は当事者の主張しない事実を(たとえ証拠上認定できても)判決の資料としてはならない。
A裁判所は当事者間に争いのない事実(自白された証拠)については、そのまま判決の資料としなければならない(証拠調べをしてこれを異なる事実を認定してはならない)
B当事者間に争いのある事実を証拠によって認定する場合は、必ず当事者の申し出た証拠によらなければならない(職権で申し出のない証拠を取り調べてはならない)


@裁判所は当事者の主張しない事実を(たとえ証拠上認定できても)判決の資料としてはならない。

 ここでいう「事実」とは、権利・法律関係の発生・変更・消滅という法律効果を判断するのに直接必要な主要事実(直接事実)をいう。主要事実の存否を推認するのに役立つ間接事実や、証拠の信用性に影響を与える補助事実には適用されない。
 賃金請求事件の例でみると、原告が主張する「金銭を交付した、返還約束があった」との事実は貸金返還請求事件の発生を根拠づけるために直接必要な事実であり、「被告は借り受けた金銭はすでに弁済した」と事実は貸金返還請求権の消滅を根拠づけるために直接必要な事実である。
 しかし、「被告は当時金に困っていたが、貸し付けた日以降現金で大きな買い物をした」との事実は貸金返還請求権の発生を判断するのに直接必要な事実ではなく、貸付の事実を間接的に推認させる間接事実である。また、「被告は原告からの借入れ後、遺産分割により多額の現金を手にした」との事実は、弁済による消滅を判断するのに直接必要な事実ではなく、弁済の事実を間接的に推認させる間接事実である。さらに、「贈与を受けたものである」との事実は、原告主張の返還約束の不存在を推認させる間接事実である。
 また、「借用書は偽造したものである」との事実も直接必要な事実ではなく、借用書の信用性に影響を与える補助事実である。
 したがって、返還約束の事実が主張されていないにもかかわらずその事実を認定して原告の請求を認定したり、弁済の事実が主張されていないにもかかわらずその事実を認定して請求を棄却することは、弁論主義に反して違法となる。
 

A裁判所は当事者間に争いのない事実(自白された証拠)については、そのまま判決の資料としなければならない(証拠調べをしてこれを異なる事実を認定してはならない)

 ここでいう「事実」も、法律効果を判断するのに直接必要な主要事実をいい、原則として間接事実や補助事実には適用されない。
 裁判上の自白とは、当事者が口頭弁論期日または争点整理手続期日において、相手方が主張する自己に不利益な事実を認める陳述をいう。自白の対象となるのは具体的事実であり、法規、その解釈、経験則などは自白の対象にならない。 裁判上の自白(民訴法179条)が成立すると、当該事実については裁判所の事実認定の権限は排除され、自白された事実について証拠調べをして、これと異なる事実を認定してはならないことになる。貸金請求事件の例で見ると、原告が主張する「返還約束があった」との事実を被告が自白しているのに、証拠調べの結果「授受された金銭は贈与として交付されたものである」と民定して原告の請求を棄却したり、被告が主張する「借り受けた金銭はすでに弁済した」との事実を原告が自白しているのに、証拠調べの結果「支払われた金銭は別の売買代金の一部として交付されたものである」と認定して原告の請求を認容することは、いずれも弁論主義に反して違法となる。

 裁判上の自白が成立すると、相手方は立証責任を免れ、これを前提とした訴訟活動を行うことになる。その後に自白を撤回することを認めたのでは相手方の信頼ないし期待を損ない、裁判所の審理も混乱し、禁反言の原則にも反することから、自白の撤回は原則として許されない。例外的に自白の撤回が許される場合としては、
(1)刑事上罰すべき他人の行為(脅迫など)により自白した場合(民訴法338条1項5号)
(2)相手方の同意がある場合
(3)自白の内容が真実に反し、かつ錯誤によってなされた場合
とされている。


B当事者間に争いのある事実を証拠によって認定する場合は、必ず当事者の申し出た証拠によらなければならない(職権で申し出のない証拠を取り調べてはならない)

 原則として職権証拠調べは禁止され、裁判所は当事者の申立てがあった証拠についてのみ証拠調べを行う。したがって、当事者は立証責任を負っている事実の高度の蓋然性を裁判所に認識(確信)させるに足りる適切な証拠を提出すべきことになる。これに失敗すればその事実は認定されず、当事者の主張は根拠づけを得られず、認められないという不利益を受けることになる。
 例外的に職権証拠調べが許される場合としては、管轄に関する事項(民訴法14条)、官庁などの団体に対する調査嘱託(同法186条)、当事者尋問(同法207条1項)、公文書の成立の真正に関する官庁等への照会(同法228条3項)などがある。


(3)裁判所による釈明権の行使(弁論主義の補完)

 釈明権とは、事案の事実関係や法律関係を明らかにするため、当事者に事実上、法律上の事項について問いを発し、または立証を促す裁判所の権能です(民訴法149条1項)。弁論主義の下では裁判資料の収集は当事者の権限かつ責任とされるが、当事者の主張立証が不十分・不適切と裁判所が判断する場合にまで当事者の責任としてして放置することは、裁判所に対する国民一般の信頼も損なうおそれがあることがら、弁論主義を補完するものとして認められたものである。

消極的釈明と積極的釈明
 裁判所の行う釈明権行使には消極的釈明と積極的釈明があるとされている。消極的釈明とは、当事者の申立てや主張に不明瞭な点があったり、前後矛盾する点がある場合に(貸金の返還を求めるのか売買代金の支払を求めるのか不明瞭な場合など、これを問いただして主張を明確に整理させるための釈明である。 積極的釈明とは、当事者が事案の内容上必要な申立てや主張そしていない場合に、これを示唆し、指摘する釈明である。この積極的釈明権行使の範囲については、裁判所の中立性・公平性の確保との関連で議論の多いとことである。

◆積極的釈明権行使の基準
 どのような場合に積極的釈明権が行われるのかを、事実と証拠の関係で整理すると、一応次のように考えることができる。
@事案の内容からみて当然に想定される主要事実が主張されていな場合
 たとえば、貸金訴訟において、消滅時効期間が経過しているのに被告が時効援用の主張をしない場合(民法167条など・145条)は、時効援用の主張をするかどうかの釈明を求めること、
などである。
 訴訟代理人をつけずに被告本人が訴訟追行している場合には、時効制度についての知識すら持ち合わせていない被告も多く見受けられることから、法的知識としての時効制度の説明を行ったうえで、援用の意思があるかどうかの釈明を求めることは許されてよいとする見解も増えつつある。

A証拠上認定できる主張事実が主張されていない場合
 たとえば、貸金訴訟において、証拠上弁済の事実が認定できるのに被告がこれを主張していない場合は、その主張を促すことになろう。

B主要事実が争われているのに、存在することがうかがわれる重要な証拠の申出がない場合
 たとえば、貸金訴訟において、返還約束や金銭交付の事実が争われているのに、これを認定するに足りる証拠である借用書や領収書などの存在がうかがわれるのもかかわらず、その証拠の申出がない場合には、提出を促すことになろう。

C立証活動が不十分であるのに当事者が立証十分として誤解している場合
 このような場合、裁判所としてはその時点での心証をある程度開示して、さらに立証を促すことは許されていると考えられている。


◆釈明を求められた場合の当事者の対応
 当事者には裁判所の釈明の求めに応じる義務があるわけではない。しかし、裁判所は、訴訟の進行状況に応じた事件に対する法律上の見解や心証の程度を踏まえ、そのまま放置すると当該当事者の不利益になることを考慮して釈明するのが通常であるから、一般的には釈明に応じないと不利益な裁判を受けるおそれがあるといえるであろう。
 攻撃・防御方法の趣旨が不明瞭であるとして釈明を求められているのにこれに応じなかったり、釈明すべき期日に欠席すると、裁判所はその攻撃・防御方法を却下することができるとされている(民訴法157条2項)。釈明を求められた当事者としては慎重にこれに耳を傾け、対応を検討すべきである。

 

3.証拠調べの実際

(1)書証の証拠調べ

(A)書証申し出の方式
 書証の申出は証明すべき事実を特定して、文書の原本を提出して行うのが原則である(民訴法180条1項・219条、民訴規則143条)。事前に写し(相手方の分と裁判所の分)を提出し、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目、作成者および立証趣旨を明らかにした証拠説明書を同数提出する(同規則137条1項)。相手方に送付する文書の写しおよび証拠説明書は直送できる(同条2項)。
 証拠の立証責任側が文書を所持していない場合は、相手方または第三者が所持する文書であって、その提出義務を負う者については文書提出命令の申立てによらなければならない(民訴法219条〜221条)。所持者が任意に提出に協力する見込みのある文書については、文書送付嘱託の申立てによることができる(同法226条)

(B)書証の証拠調べの実施(文書の成立の真否)

 書証の証拠調べは文書の成立の真否を中心に行われる。書証は提出者が主張する文書作成者の思想内容を証拠資料とするものであるから、当該文書が提出者が主張する者によって作成されたものかどうかを確認する必要がある。これが認められると文書が真正に成立したということになって、文書の形式的証拠力(証拠としての資格)が備わり、その実質的証拠力(証明力、証拠価値)が裁判官の自由心証によって判断されることになる(民訴法247条)。

 

(2)証人の証拠調べ(証人尋問)

(A)証人尋問申出の方式
 証明すべき事実を特定して、これと証拠との関係を具体的に明示してしなければならない(民訴法180条1項、民訴規則99条)。さらに、証人を指定して尋問に要する見込み時間を明らかにし、個別的・具体的に記載した尋問事項書(相手方に直送する)を添えて申出なければならない(同規則106条・107条)。これらは、裁判所の証拠採否の判断、裁判所の証人呼出しの便宜、審理計画上の必要、相手方の反対尋問の準備などを考慮したものである。
 申し出にあたっては、争点に関して真に必要かつ適切な証人かを十分に吟味する必要がある(たとえば、交通事故を直接目撃したわけではなく、事故後その状況を一方当事者から聞いたにすぎない者の供述は間接的で証拠価値が低く、本人尋問によることで足りるというべきである)。裁判所も申し出のあった証人をすべて漫然と採用するわけではない。
 相手方としては、証人と申し出者との関係、証人と事案内容との関係、尋問事項の内容などを検討し、反対尋問の準備をする。

(B)証人尋問の実施

 尋問は、まず裁判官が証人の人定質問を行い、宣誓の趣旨および偽証の罰(刑法169条)を説明した上で証人に宣誓をさせる(民訴法201条、民訴規則112条)。尋問の順序は、
@申し出をした当事者の主尋問
A相手方野反対尋問
B申し出をした当事者の再主尋問
C必要があればさらに当事者の主尋問
D必要があれば裁判所が介入尋問(補充尋問)
E必要があれば当事者の介入尋問
となる。訴訟代理人がついている場合には、@〜Cは訴訟代理人が行うことになる。
 当事者に異議なく裁判所が相当と認める場合には、証人尋問に代えて証人に書面の提出をさせることがある(書面尋問 民訴法205条)。これは証人が遠隔地に居住している場合、病気などで出席が困難な場合などに相当と認められるが、簡易裁判所では、さらに当事者の異議の有無を問わず、証人だけでなく、当事者本人、鑑定人の場合にも許される(同法278条)


(3)当事者本人の証拠調べ(本人尋問)

 原則として証人尋問に関する規定が準用される(民訴法210条、民訴規則127条)。また、本人尋問に関する規定は当事者を代表する法定代理人について準用されるので(民訴法211条)、未成年者の親権者、成年後見人、法人の代表者の尋問は本人尋問として行われることになる。

(A)本人尋問申し出の方式
 尋問見込時間を明らかにし、尋問事項書を提出、直送すべきことは証人と同様である(民訴法127条・106条・107条)。本人の場合は証明すべき事実との関係は明白であるから、立証の必要がある限り、証人とは異なりその必要性、選択の適切さが問題となることはなく、採用されるのが一般的であるほか、裁判所の職権でも尋問することができる(民訴法207条1項)。

(B)本人尋問の実施
 まず裁判所が本人の人定質問を行うことは証人の場合と同様である。宣誓をさせるかどうかは裁判所の裁量による(民訴法207条1項)が、いわゆる一体型審理を行う少額訴訟事件及び準少額訴訟事件を除き、宣誓をさせる例が多いと思われる。宣誓はその趣旨および虚偽の陳述の制裁を説明したうえでさせるが(民訴規則127条・112条)、制裁の内容は10万円以下の過料である(民訴法209条1項)。尋問の順序は、証人尋問と同様に
@主尋問
A反対尋問
B最主尋問
Cさらなる当事者の尋問
D裁判所の介入尋問(補充尋問)
E当事者の介入尋問
ということになるが(民訴規則127条・113条)、本人訴訟の場合は裁判所が主尋問を行う例が多いであろう。尋問における質問事項ないし質問方法についての制限(同規則114条・115条)も、その趣旨に反しない限り準用されることになる

 

4.弁論の終結

 当事者の主張・立証が尽き、訴訟が裁判をするのに熟したときは、裁判所は弁論を終結し(民訴法243条1項)、判決言渡期日を指定する(同法93条、民訴規則156条)。しかし、裁判所は終結した口頭弁論の再開を命ずることができるから(民訴法153条)、当事者は主張・立証を追加する必要があるときは、その理由を明らかにして裁判所に口頭弁論再開の職権発動を求めることができると考えられる。
 ところで、当事者の双方が口頭弁論期日に欠席すると訴状、答弁書、準備書面などの陳述犠牲も許されず(民訴法158条・277条)、当該期日では全く裁判資料が得られない。当事者の一方が欠席すると原則として準備書面記載事項以外は主張することが許されず(同法161条3項)、十分な裁判資料が得られない。そうすると、そのような当事者が欠席する期日を重ねても、訴訟はなかなか判決をするのに熟したと言える状態にならない事態に陥る。このような場合は、訴訟手続の円滑な進行が阻害され、裁判所や相手方当事者に無用の負担を生じさせることになる。そこで、このような不熱心訴訟追行当事者に対する措置として、裁判所は、審理の現状および当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、弁論を終結し、終局判決をすることができる(同法244条)。
 


 

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