民事調停手続の特徴
1.紛争の実情に即した柔軟で妥当な解決
訴訟は、法規を大前提、証拠により認定した事実を小前提として、大前提に小前提を当てはめて結論を導き出し、判決という形で公権的な判断が示されます。従って、判決における判断は、必然的に法律に拘束されます。
例えば、金銭消費貸借契約に基づく貸金請求訴訟においては、請求原因事実が証拠により認められれば、弁済などの抗弁事実が主張立証されない限り、民法などの実態法を適用して貸金を一括して直ちに支払えという判決が言い渡されます。しかし、被告に返済能力がなければ、原告は勝訴判決を得ても、それは絵に描いた餅にすぎません。
もともと私的な権利義務の多くは、当事者間で自由に変更・処分できる性質のものです。当事者間で、借受金債務の一部免除や分割払いのなどの合意ができれば、その効力が認められることは当然であり、債権者としても絵に描いた餅より、分割弁済でもよい、あるいは貸金の一部の回収だけでもよいと考える場合もあるでしょう。調停においては、法律的な判断を基本におきながら、当事者双方のあらゆる事情を総合的に考慮して、分割弁済、弁済期限の猶予、債務の一部弁済など当事者双方にとって利益になるように、さまざまな内容で貧相の実情に即した柔軟で妥当な解決を図ることができるのです。
2.紛争の全体的な解決
訴訟では、原告が取り上げた権利・義務(訴訟物)について判断が示されるだけですので、必ずしも紛争の全面的解決にならない場合もあります。
これに対し、調停では、当初申立人が取り上げなかった権利・義務がある場合にも、これを調停の対象に取り入れて、話し合いにより当事者間に存在する紛争の全面的解決を図ることができます。
例えば、建物の明渡しと遅延賃料の支払を求める調停において、当事者間に別に貸金についても「紛争」がある場合、この貸し金の紛争も調停の対象に取り入れることによって当事者間の紛争の全面的な解決を図ることができます。
また、調停では、当事者が直接話し合って合意に達することで、それまでの感情的対立が解消されることもあり、いわば人間関係の修復といく副次的効果も期待できます。
3.簡易な手続
調停手続は、訴訟手続のように厳格かつ複雑な手続ではなく、簡易な手続が定められています。
例えば、申立は訴状のように厳格な請求の趣旨や請求の原因の記載は必要とされてないうえに、調停委員は自由な形で当事者から主張を聞くことができ、調停委員会は、職権で、簡易な手続により事実の調査を行うことができます。また、申立費用も訴訟に比べて安いのが特徴です。
4.非公開手続
訴訟手続は、公開の法廷で行わなければなりません。これに対し、調停手続は非公開で行われます。
調停は当事者の話合いによる紛争解決の制度であるゆえ、公開によって手続の公正を保証する要請はあまりないこと、他人の目を気にせず素直な話合いをするには非公開の席のほうが妥当だからです。
5.民事調停委員の関与
専門的知識や社会生活上の豊富な経験を有し、人格識見の高い調停委員が関与し、その知識や経験、健全な良識を「条理にかない、紛争の実情に即した妥当な解決」に役立てようとする制度です。調停委員の関与は、国民の司法参加を実現している制度でもあります。
6.判決と同様の効果
調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有するものとされています。
従って、調停条項中、例えば「金○○万円を支払う」とか、「○○建物を明渡す」というような給付約束を内容とする条項は、強制執行力が認められ債務名義となります。
みなとみらい司法書士事務所
代表者 司法書士 佐藤鋭一
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